5月21日(木)湯田中温泉

 今日から全国的に雨予報で、朝から強くなったり、弱くなったりの雨の中、10:00タクシーを呼んだころには、ちょうど雨も弱まり、あざみ野駅から市営地下鉄で横浜へ。JRへの乗り換えにウロウロして、交番できいたりして、やっと京浜東北線に乗る。徳見は「横須賀線なら早いのに……」と、ボソッというが、後の祭りで、東京駅に着いたのが11:30近く。何とか新幹線の切符売り場にたどりつく。「長野、障害者割引、2名」というと、切符売り場のお姉さんは、手際よく、「12:04発、長野行き・あさま611号」の切符を各2枚、そのうちの1枚には、指定席が書かれている。発車まで10分もない。「東京駅で昼飯でも……」などという目論見はもろくも崩れ、急いでホームへ向かう。

 さて、指定の8号車をめざすが、入口のドアが狭くて、不吉な予感……。しかし、かろうじて乗ることはできた。さて、目的の10番D席は……と、客席に入ると、なんと通路が狭くて、車イスで入ることができない! しかたがない、このままデッキで過ごすしかないか、と覚悟する。すぐに発車のベルが鳴る……。そのとき、徳見が「トイレどうしようか」とつぶやく。今いる8号車と9号車の間のデッキにはトイレがない。さて、どこにあるのか、動き始めた電車の中を、次の9号車と10号車の間のデッキへ行くと、トイレがあった。

 しかし、徳見の車イスは車内を通ることはできない。このまま2時間近くトレイをがまんできるわけがない……。さて、どうしようか、困ったなぁ、などと思っているうちに、次の上野に着いた。ここで、下りて、次のデッキを移るしかないけど……と思っていると、車外のアナウンスで、「停車時間は2分」という。幸い、荷物は私の背中のリュックと、車いすの背中にあるだけで、おろしてはいない。乗降客もいない。徳見に「2分あれば、大丈夫だよ!」と、急いでホームに下りて移動する! 

 こうして、徳見は、トイレ近くのデッキで、安心して1:30ほどの「旅」を満喫した……はずはないか!? それでも、上田近くになると、赤ちゃんを背負った若い母親と「交流」など楽しんだようだから、よしとしようか。

 私は、10号車の指定席の、なるべくデッキ近くのあいている席に座る。やがて、高崎に近づくと、車掌が来て、「ここは、高崎から乗る客の席だ」という。事情を話すと、あいている席に変更してくれた。大分デッキから離れたけれど、大した違いはないから、これもよしとしようか……。しかし、こんなことなら、指定席などとらず、自由席でもよかったのではない、何で、切符を買うとき、「自由席もある」とか「客席は車イスが通れない」なとと、説明がなかったのか……などと、疑問がわく。

 13:57長野駅着。幸い雨はあがっている。徳見は車内で、飲み残しの缶コーヒーを飲んだだけだという。長野駅で、食事でもしようか、その前に、長野電鉄・湯田中温泉行きの時刻を確かめておこうと、トイレに行ったり、乗り場を探したりして、例によってウロウロと探し回って、やっと切符売り場にたどりつくと、次の湯田中温泉行きは14:27「特急・ゆけむり」。発車まで10分もない。こうして、またも、徳見は食事をしそこなってしまった。

 ところで「ゆけむり」に乗り込んだところで、徳見が「車いすの前輪がおかしい」という。見ると、右側・前輪のタイヤが腐食して、軸からはずれかかっている。この車椅子は、介護保険のレンタルで、つい先日、業者から「点検に行きたい」と連絡があったばかりであった。とにかく、帰るまで外れないように祈るのみだ。

 15:12湯田中温泉に着くと、数台のワゴン車が、それぞれ旅館の名札をかかげて、お客さんを待っている。そういえば、昔、車であちこち車中泊旅行をしていたとき、どこかでこんな風景を見たことを思い出す。そのときは、まさか自分が、「お客」の立場になろうとは夢にも思わなかった……。何となく感懐めいたものを感じながら、「ホテル豊生(ほうせい)」の車に乗り込む。

 予約の電話をしたとき(4.24の項)、こちらが車イスというと、温泉がついている部屋にしてくれた。「内風呂」的なイメージでいたが、10人も入れそうな、石造りの立派な「温泉」だ。一休みすると、徳見はさっそく温泉に入るが、すぐに出てくる。

 「車イスの前輪が外れそうで……。どうしようか」という。それが気になって、ゆっくりと温泉に入れないようだ。たしかに、これが外れたら、車イスが使えない。とにかく、紐か針金で固定するしかないだろう、と帳場へ持って行って「相談」すると、スタッフの一人(これもジィさんの部類だ)が、紐やら針金やらをもってきて、あれやこれやり始める。かれこれ2~30分格闘の末、何とか形になったようで、丁重に礼を言う。

 部屋に持ち帰り、徳見が乗って、しばらくすると、破損した小さなゴムが畳の上にいくつか転がっている。こんどこそ、あさって帰るまで外れないように祈るのみだ!

 夕食は、別の部屋に用意にされている。6:30に行くと、10人程度の部屋に2組しかいない。私は「素泊まり」なので、パンと飲み物を持参する。徳見用の料理は、肉のしゃぶしゃぶやホイル焼きなど6~7品がならんでいる。昼食を食べていない徳見だが、半分程度食べて、「おなかいっぱい……」といい、残りは私の胃袋に収めたが、これは想定内で、私が素泊まりにしたのは、何も胃ガンで食欲が落ちているというだけではないのだ。

 温泉駅宿の車が札かかげ 客呼ぶ声に夕闇迫る

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